2012年03月26日

遠隔画像診断が流行らなかったのは


 若い医師から「遠隔画像診断がこれまで流行らなかったのはなぜでしょうか」と訊かれました。

 私は、

1:インフラが高くて使いにくかった
2:画像診断の必要性が小さかった
3:放射線科医の確保が困難

のが主因と思っています。


■1

 インフラは、PCとインターネットの発達前は、専用回線(月16万円;1,6Mbpsとか)とワークステーション(へたするとミニコン)が主流で、初期投資が最低で数百万円(データセンター別)+毎月数十万円かかりましたので、採算性はありませんでした。
 要は、大学や県が国からお金をもらってやるものだったわけです。

 それから PC が発達して安くなり、インターネットも ISDN 回線の時代になり、ドクターネットなどの商用プロバイダが世に知られるようになりました。まだまだ端末は高いのですが、読影料を1000円以下に抑えることによりなんとか利益が出るようになりました。

 そのあたりで私も始めたのですが、5年前くらいからイーサイトのクラウド型が出て早速乗り換えました。
 特殊な端末は要りませんから、今では誰でも参入できる状態になっています。

 ですから今後は、実力があり、きちんとした仕事ができることが重要視されるようになると思います。


■2

 画像診断の必要性は、CTが多列化し、MRIが進化していく過程で、内科医や外科医が「もうついていけない。プロにまかせよう」と思ってきたことで、どんどん大きくなってきました。

 昔は腹部CTは40スライスですんでいたのに、最近は数百枚から場合によっては千を超えるスライスになってきます。素人は全部見れませんし、自分の疑った疾患についての所見しか探そうとしていませんので、見落としがいっぱい出てくるわけです。ヘタすると訴訟になりかねません。

 MRI などでも「知っている疾患しか診断できません」ので、見落としがいっぱい。特に最近は新しい撮像法がやまほど出て、知っている疾患さえも診断できなくなってくる始末。



■3

 病院も放射線科医を雇うことが増えたようですが、なんとか雇うことができたとしても、「私は横隔膜から下しか読影できません」とか「トシなのでMRIは読めません」とか言われてしまうことが多いです。
 全部できる人なんていませんから。
 そう言われて、2人も3人も雇えない病院がほとんどです。
 バイトでしのごうと思ってもなかなか穴が埋まりません。



 そこで、遠隔画像診断。

 でも最近は、会社や大学のNPOなどに頼む現在のスタイルから、病院が運営するスタイルが増えてくると思います。私立の画像診断センターではすでに導入されてきているようです。
 3000円以上で会社に頼むより、1500円程度で下請け読影医に出す方が採算性がいいからです。

 ただ、いい医師を集められるという力があることが前提です。
 具体的には画像診断センターのトップが読影医の質を見極められることが最低条件ですね。



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posted by やすきー at 09:54| 滋賀 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 起業 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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